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THE STARRY RIFT

ヴィジュアル系バンドや女性・男性アイドルについて気ままに駄弁るブログです。

和風グロテスク・ロックの艶やかな毒 己龍のアルバム「暁歌水月」

ヴィジュアル系 音源感想 己龍

今回は己龍というヴィジュアル系バンドのアルバム「暁歌水月」についての記事です。

己龍の作り出す和風ホラーの世界観が私の心の琴線にヒットしてしまいまして、彼らの煌びやかでありつつも、エロ・グロ・ナンセンスで毒々しい世界が堪らないです。そんなわけで、アルバム「暁歌水月」はもう発売して1年が経とうとしているのですが、私は未だにヘビーローテーションしています。

 

その昔、最初に雑誌等で彼らのヴィジュアルを見かけたときの印象は「ケッ。キラキラなネオ系が和風ホラーを気取ってんじゃねえよ」だったのですけれども*1。音源レビューブログでの高評価な記事を見かけて、「へ~、結構いいのかもしれないなあ」と考え直してCDを買ってみたのです。

それが一つ前の「朱花艶閃」とういアルバムをだったのですが……これがもうとても良いアルバムで! 楽曲の作り込みには少し荒さというか・不安定さというかも感じたのですが、それもまた逆に彼らの狂気な和風ホラーの世界観を演出したのです。彼らの作り出す毒々しい色彩美の世界は私の目と耳を惹きつけて離してくれませんでした。

演奏がかなりしっかりしているのと、演歌っぽいアプローチがあったのも気に入ったポイントでした。それに、良い歌系の曲は本当に綺麗で耳に心地いいですし。このアルバムについても、別途記事を書きたいです。

その後、過去のアルバムも買い、「己龍いいわ~」とあっさり寝返り、ライブに行ってみたりしつつ。そんな中で迎えたのがこの「暁歌水月」の発売日でした。

この作品を実際に聞くまでは実は私はドキドキしていました。というのは、己龍がその時、ヴィジュアル系シーンで結構売れていたからです。他のバンドでも稀に見られるように、売れ始めると少しずつ落ち着いた方向になって毒々しさが薄れてしまうのでは……という心配をこっそりしていたのですが、そんなのは全くもって不要な心配でした。

曲はより洗練された印象でしたが、内包する狂気や毒はまったくそのまま。これが「己龍の進化だ!」というのを見せつけられた思いがしました。それが嬉しくて、曲は狂気が楽しくて、最高のアルバムだったのです。

 

前置きが長くなりましたが、ここで己龍のメンバーの担当楽器・カラーをまとめておきます。

  • 唯のヴォーカル:黒崎眞弥(くろさき まひろ)・紫
  • 痛絶ノスタルジック代弁第壱人者兼ギター:酒井参輝(さかい みつき)・赤
  • ギター:九条武政(くじょう たけまさ)・緑
  • ベース:一色日和(いっしき ひより)・ピンク
  • ドラムス:遠海准司(とかい じゅんじ)・青

ヴィジュアル・イメージとしては、メンバーカラーを使った和風のキラキラした衣装を着ていることが多く*2、背景は畳敷きの和風邸宅やお社の前だったり、首吊り髑髏が並んでいたりもします。日和ちゃんは女形で、上着の着物+ミニスカート+二―ハイな姿がとてもキュート。九条さんは常に口元を隠すものを付けておいでです。

己龍の楽器隊の演奏は手数が多いく、かつ、音の太さや泥臭さのようなものを感じるの特徴だと思います。それがグロテスクな狂気とスプラッタな世界観にぴったり合っているのですよ。

一方、眞弥さんの歌声は女声のように高くて美しい反面、前作まではやや不安定な印象がありました。逆にそれが和風ホラーの恐ろしさ・狂気っぷりを際立たせていたわけですが、今回はかなりしっかりした印象の歌声になっており、「あれ、もしかして、前作までの不安定さはわざとだったの?」と。デスボイスも歌もレベルアップ。でも、内包される狂気さはしっかりと声から感じ取れて、ボーカルとしての能力の高さを見せつけてくれました。

といった感じで「暁歌水月」は素晴らしい作品に仕上がっていたのですよ! それでは早速、収録曲の感想を書いていきたいと思います。ちなみに、私が持っているのは通常盤です。

 

①アカイミハジケタ

1曲目、いきなり濃い毒を含んだシングル曲を持ってきています。

イントロの鍵盤は、和風の旋律を織り混ぜながら不安を掻き立てるようなフレーズ。そうやって緊張感を高められつつあるところに、眞弥さんが低音でゆっくり歌い始めて……と思ったら、突然全員集合の演奏。いきなりのギアチェンジでトップスピードに持って行きます。

拷問を想起させる歌詞を苦しく呻くように歌う眞弥さんが曲の世界観を作り、ギターは三味線をイメージしたようなリフでそれを補強しています。ギターは九条さん本人が「弾いてみた」動画を上げており、それを聞くととわかりやすいのではないかと。

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体が痛くなるような歌詞が耳に残りますね……。


②靂霹ノ天青

戦前の軍国主義的な思想を綴った歌詞が、ブルース系の曲に乗せられています。歌詞の字面を見るとかなりアッチ系寄りなのですが、曲になると勇ましさと共にどこか虚しさも含んでいるような印象でした。爽快に飛ばしていく凛々しい曲である半面、特に「ラララ、ラララ…」と歌う部分から漂う哀愁が堪らないです。

 

③悦ト鬱

こちらもシングル曲。この楽曲は己龍の美しい部分が凝縮された曲だと思います。和風の美しい情景描写から、もの悲しい想いが透けて見えて、なんとも味わい深い曲となっています。

途中に挿入されている琴のような音色や、思い切って電子音を入れている部分が良い演出。眞弥さんの女性のように高い歌声もこの曲にベストマッチしていると思います。歌い方が女性演歌歌手のようで、歌い上げる部分でのこぶし回しが気持ちいいのと、声の艶やかさが素敵です。

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④蛾眉ノ蛹ハ羽化ヲ知ラズ

楽器隊が低音の歪んだ音で入るメタルっぽい曲なのですが、笛や三味線のような音が彩るのと、やはり眞弥さん独特の歌い方が己龍らしい曲に仕上げています。演歌歌手のような歌い方を意識しつつ、わざと汚く歪んだ声も出しているところが非常にらしいなと思うのです。

 

⑤灯

こちらは疾走感のあるロック。かなりテンポの速い曲で、彼らのロックバンドとしての魅力をがストレートに感じられる作品です。もちろん、和風な味付けが施してあるので、アルバムの世界観にもしっかりと馴染んだ曲でもあります。

 

⑥影絵ノ鴉

非常にキャッチ―な曲だと思います。間奏のキラキラした打ち込みの音(なんと言って表現すればいい音なのかがわからない……)も込みですごくキャッチ―。昔のアニメソングのような懐かしさも感じます。

サビ以外の部分は不安を煽るような雰囲気があるのですが、サビで急に美しいメロディーに切り替わるところにも耳を引かれます。

 

⑦愛怨忌焔

これはイントロからしていきなりカッコいい。こちらもシングル曲ですね。

タイトルから予想できるように、かなりの狂気っぷりを音でも歌詞でも表現しています。もうこれは見て聞いてもらうのが一番だと思うので、公式のMVを貼らせていただきます。ただし、結構ショッキングな映像も含んでいるので、グロ映画が嫌いな方は見ないようにお願いします。

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グロテスクな和風ホラーの狂気をトップスピードで持って来た形がこの曲なのだと思っています。後半の方で演奏がパッと急に止んで眞弥さんの声だけになる演出が異様にカッコよく、心憎い演出です。

 

⑧鎮具破具

お茶目な雰囲気で始まる曲なのですが、どんどん己龍節になっていきます。手数が多い&テンポが速い演奏と、自己崩壊していくような気持ちの悪い歌詞、それを気持ち悪く歌う眞弥さんが非常に己龍らしいところだと思います。

この曲は歌詞で言葉遊びをしている部分がとても面白いのです。その言葉のチョイスとメロディーが頭に残って癖になります。

あと、この曲や愛怨忌焔……というか、アルバム全般的にドラムが物凄い手数で圧倒されます。准司さんすごいな。

 

⑨暁歌水月

お祭りのお囃子のような雰囲気で始まる本作品は、アルバムタイトルを冠しているだけあってこのアルバムの象徴となる曲です。3曲目の「悦ト鬱」のような系統の美しい曲なのですが、ただ美しいだけではなく、「死ぬまでこの道を進んで行くよ」という強いメッセージを持った曲でもあるのです。こういうリスナーの心がキュッとなるような、感動するような曲を、グロテスクな曲の合間にサラッと入れてくるところが己龍の小憎らしいところだと思います。「笑顔で手を振りましょう」の歌い方が優し過ぎて、ほろほろきてしまいます。

 

⑩邪一輪

この曲は明らかにライブで観客を暴れさせるために作った曲だと思われます。曲を聞いただけでフロアの狂乱ぶりが予想できますね。このデスボイスは眞弥さんなんですかね、かなり低音が出ていてびっくりしました*3。日和ちゃんのベースが非常にカッコいい曲でもあります。ベースのフレーズまでが和風。

 

⑪井底之蛙

 子供の頃、「なべなべ底抜け~」というわらべ歌で遊んだ記憶があります。こちらの曲はそのわらべ歌を狂気なホラーに改変した曲となっています。歌声が震えているよう声音だったり、ギターも調子の外れたフレーズを弾いていたりで恐怖感を煽ってくれます。わらべ歌に追加された歌詞が怖いものばかりで、なんだか間違った場所に迷い込んでしまったような捩れた世界に来てしまったような印象を受ける曲です。

 

⑫蹲

11曲目までとは打って変わった雰囲気になって戸惑います。曲の前半は呟くような歌声とアコースティックギターのみで静かな空気感。楽器隊が合流してもおとなしく、歌謡曲的なアプローチの穏やかな曲なのかと思わせます。

しかし、眞弥さんの一言の呟きをきっかけに、段々と曲の雰囲気が変わり、歌声も大きくなっていきます。後半は眞弥さんが泣き叫ぶような声で歌います。何を言っているのかわからないくらいの号泣・絶叫で、非常に演劇的。こういう表現が許されるのもヴィジュアル系バンドの作品ならではじゃないでしょうか。

 

⑬見世物鬼譚

この曲からは通常盤のみの収録曲です。しかし、それが勿体ないくらいのクオリティーが高い楽曲です。

 囃子歌というジャンルでいいのでしょうか? それをハイスピードで超尖らせた感じの楽曲です。しかも、タイトルどおり、いかがわしい見世物小屋でのグロテスクで淫猥な上演物を描いた歌詞。多分、この曲はまかり間違ってもテレビ・ラジオで流せないだろうな……。でも、こういう世界観のが好きな人には直球で刺さる曲だと思います。この尖り具合、私は大好きです。

 

⑭イナイイナイ

最後もハイテンションに己龍は攻めてきました。彼方と此方の世界が混じり合う、不吉で不安定な世界観の歌詞。その中を重たくて異様に早いテンポの演奏と、美しいような気味の悪いような高音の歌声がテンション・マックスで駆け抜けていく様には、独特の気持ちよさがあります。

 

 

といったような感じで、とても面白いアルバムで、私は飽きずに繰り返し聞いています。グロテスクな世界観なので苦手な人もいるかもしれませんが、好きな人は癖になるはず。

自分の中の新たな扉が開くかもしれない己龍の世界を是非一度体感してみてほしいです。

*1:本当にすみません。当時は聞きもしないで批判する「最近の●●はダメだな」系おばさんでした。

*2:暁歌水月でのモチーフは喪服だったので黒い衣装でしたが。

*3:高音ボーカルはデスボイスを苦手にする印象があるので