THE STARRY RIFT

ヴィジュアル系バンドや女性・男性アイドルについて気ままに駄弁るブログです。

森田剛主演舞台「すべての四月のために」感想

どうも。バンギャル*1だったはずが、いつの間にか男性・女性アイドルを追いかけてしまっている、もういい歳の社会人フミヅキです。クソDDですみません。

そんな私はV6のメンバー全員大好きな剛担なのですが、先日、剛くん主演舞台「すべての四月のために」を見てきましたので、その感想をまとめておきたいと思います。【ネタバレ有り】で書きますので、ご注意願います。

 

 

ストーリーについて

剛くんや演出家の鄭さんのインタビューはあまり読まない状態で観劇しました。(というか、雑誌を買うだけ買って積んでる状態だった……)

戦時下の朝鮮半島に連なる小さな島の理髪店が舞台、しかも主役の萬石(剛くん)は本当は四姉妹の長女を好きなのに次女と結婚して……という内容は事前情報として知っていたので、かなりドロドロしたシリアスなお話なのかなと思っていたら、重たいは重たいんですけど、それを引きずらせない構成になっていました。

というのは、劇中、かなりベッタベタなボケが結構な数ぶち込まれているのです。

見ながら「吉本新喜劇か!」と心の中でツッコんでいたのですが、帰ってきてから各種雑誌のインタビューを読んで、鄭さん自身がバックグラウンドとして吉本新喜劇の名前を上げていらっしゃったので、だよね~と思いました。

客席で見ていてかなり笑いました。声をたてて笑ってOKな雰囲気で、まわりの観客の皆さんも結構笑っていました。

 

この舞台のテーマは「嬉しいことも悲しいことも、やがて巡って新しい季節はやってくる」なのかなと思いました。

 

基本的に舞台上に登場するのは、理髪店の家族に対して友好的な人達ばかりです。日本軍の人も、遊びに来る近所の人達(?)も。ただ、理髪店が命令により日本軍の管轄下に置かれていることなど、いくつかの理由により、島の人達から孤立気味であることは示されています。

次女については、萬石(剛くん)との関係がギクシャクしていること、日本軍のせいで教師として本来の役割を全うできないことなど、フラストレーションマックスの中、ある男性に同情して関係をもってしまう。他の姉妹と父母はそれに対して直接的な注意はしないが(例えば、次女の父はその現場を見てしまったのに、吉本新喜劇式のぼけぼけリアクションを取った上で、その事実を自分の心にしまっておく)、当然、萬石とはさらに関係悪化。萬石は萬石で、ヤケクソのように「本当は長女と結婚したかった」と家族の前で公言し、長女と次女の距離はさらに開く。

美しく明るい三女は華やかな仕事をしているように見せて、同時にストレスも溜まっている。

四女は日本への反乱容疑で連れて行かれてしまう。

 

それでも、結局、次女は萬石の子供を妊娠するし、次女と長女は団結するようになり、萬石も次女を大切にするようになり夫婦仲も良好に落ち着く。長女は反対を受けつつも日本軍の男性と結ばれ、日本に渡る。三女はどこまでも明るく美しく振る舞い、我が道を進む。

*2は亡くなり、理髪店は村八分になるが、やがて、そこに萬石と次女の子供(舅・姑にとっての孫)が訪ねてくる。

どんなことがあっても、やがて落ち着くべきところに落ち着く。時代は巡り、世代は巡り、人の営みは続いていく、ということなのかなと考えました。

 

四女が酒飲み友達と一緒に言うセリフに、「春は●●で一杯、夏は●●で一杯、秋は●●で一杯、冬は●●で一杯。そして、また春は●●を見て一杯」*3というようなものがあるのですが、その言葉がすべてを象徴している気がします。色々なことがあっても、やがて時は巡り、暖かい季節がやってくるということ。

 

あと、思ったのは、萬石が主役というよりは、四姉妹の生き様にこそフォーカスが当たっている……というのも、ちょっと語弊があるかなあ……? いわば「あの時代」「あの時代の空気感」こそが主役という気もしました。

剛くん主演ですけれども、萬石(剛くん)がいない場面も多いです。しかも、彼はあの家族の中では婿という立場のいわば外の人であり、彼が常に手帳を手にして記録をしている様子が表すように、家族や時代を「見つめて伝える」ことが彼の役割の一つであるように感じました。ある種、狂言回しのような立場というか。

そして、萬石のもう一つ重要な役回りは、世代を繋ぐ象徴だということ。「四季の巡り」は「世代の巡り」も表しているのだと思います。萬石は色々なことを乗り越えて、次女のとの間に子供をもうけ、その子が再びあの理髪店を訪れる。しかも、その子は萬石そっくり(剛くん二役)。

このラストは、すごく美しい帰結だなあと感じました。

 

役者さん達について

とりあえず、萬石の舅を演じる山本さんがものすごく自由で、ものすごかった! 感想になってないですけど(笑)、ボケぶりが素敵。同時に家族を包む安心感と優しさも感じられる包容力に溢れていました。

萬石の姑役の麻実さんは、おばちゃん~おばあちゃんの役だし、しっかりおばちゃん~おばあちゃんに見えるのに、すらりとした立ち姿がものすごく美しくてびっくりでした。しなやかで芯の強い女性で、オモシロお母ちゃんな面もあって素敵。

長女役の西田さんは脚の障害を負いながらも、ひたむきに優しい役柄が素敵でした。そのひたむきさに次女が「ずるい」と感じてしまうのにもすごく説得力がありました。あと、お客さんの脚を洗う姿が、なんかこう……すごくいいです……!!

次女役臼田さんは、ストレスとモヤモヤした気持ちを抱え込んで爆発寸前な次女の感じがすごく伝わってきました。パッと見はしっかり真面目そうなのに、実は心の赴くままに動き出す激情感。あと、眼鏡姿が、なんかこう……すごくいいです……!!

三女役の村川さんは華やかな役柄を見事に体現されていて見惚れました。同時に、四姉妹の中で一番コメディエンヌぶりを発揮していて、それも可愛らしかった。自由奔放に見えて、何気なく家族を気遣っている感じも素敵。あと、お洒落なモンペ姿が、なんかこう……すごくいいです……!!

四女役の伊藤さんは秘密を抱え込んでいる部分・覚悟を決めている部分と、家族や仲良しの皆と楽しくお酒を呑んでいる時のギャップ感が素敵。上でもあげたセリフが好き。あと、やっぱり、華奢な体型にハスキーな声という組み合わせが、なんかこう……すごくいいです……!!

家族以外だと、片足を失った将校役の近藤さんの、真面目な軍人ぶりと家族の吉本新喜劇的ノリに巻き込まれるパートとのギャップ感が好き。あと、朝鮮人なのに憲兵にさせれてしまった役の小柳さんは、お酒に逃げてるのにきちんとピュアな印象を保っているのが素敵だと思う。あとは、三女の元夫で現付き人役の中村さんの空気感がすごくいい! 頼りない男なんだけど、無茶な三女をしっかり受け止めている感じがすごく良い雰囲気でした。

 

あと、役じゃないけど、セットの理髪店がすごく素敵でした。ナチュラルテイストな木材の見える建物で、木製棚とか、タイル貼りの流しとか、タライとか、あの優しい雰囲気が好きです。

 

そして、剛くんはコミカルな演技と、ズルい男な感じと、拗ねるリアクションと、可愛らしい青年と、幅広い演技をみられて面白かったです。

踊りの大会に向けて、お舅さんが「自分が島一番の踊り手だ」と意気込んで練習しているのを、萬石が真似て踊ってみたら、お舅さんが「自分よりうまく踊らないでくれる!?」って言う場面はニヤニヤしちゃいました。そりゃ、剛くんはジャニーズでも屈指の踊り手ですもの……!

孫になって登場した時の、可愛い子ぶりもすごい。あのやや少年的な声のトーンもズルいなあと思います。

剛くんの声は独特で、少年のようにキラキラしているのに刺々しさ、孤独さみたいなものを含んでいるから、今回のちょっとズルい男、そのせいでギクシャクしてしまう感じ、そして、その子供という役はとても合っているのだろうなあと思いました。

カーテンコールで、白髪姿の麻美さんの隣でにこにこ笑う剛くんは、おばあちゃん子感が満点で最高でございました。カーテンコールだし、もうジャニオタ的に萌えてもいいよね!?

三回くらいカーテンコールで出てきてくれて、最後に捌ける時には手まで振ってくれて、私、お水を頂いた感じがしました(「植物の水やりは、ファンへのサービスと同じようにあげすぎないのがポイント」的なことを剛くんは仰っている)。前回ライブのシェキラ!の件と合わせて、私、相変わらず手のひらの上で転がされております。

シェキラ!の件、詳細は→

V6 LIVE TOUR 2017 The ONES 静岡エコパアリーナ(2017/10/20) - THE STARRY RIFT

 

蛇足

この舞台は冒頭、ある手帳を持った青年が島を訪れるところから始ます。場面が切り替わり、年を取って一人で理髪店を切り盛りするお姑さんが、お舅さんの幽霊とわちゃわちゃしながら過去を回想する。戦時下の理髪店でどんなことが起きたのかを描いて、また現代に戻ってきて、理髪店に姑の孫である青年・萬吉(冒頭の青年・萬石の息子)が訪れます。

姑「萬石さんそっくり!」

萬吉「よく言われます(笑)」

萬吉と触れ合うお姑さんにお舅さん(幽霊)がちょっかいを出し、幽霊(萬吉には見えていない)に対してお姑さんがリアクションを返すものだから、萬吉は「?」というリアクション。お姑さんが「気にしないでいいのよ」と言い、他の家族の近況などを話しながら舞台は終わります。

時代は巡り、世代も巡り、小さな幸せに包まれる終わりでした。

 

ただ、私がここで気になったのは「お舅さんの幽霊って本当にいるの?」ということでした。

あの幽霊は、村八分にされた理髪店に一人で残ったお姑さんが見ている幻なのでは?

実際、お姑さんは、萬石一家の近況(手紙などで伝えていたこと)について、きちんと覚えておらず、少し認知症的なニュアンスが感じられます。

であるとすると、萬吉って実在するの?

夫の幽霊がいる理髪店に、萬石にそっくりな孫が訪ねてきてくれたという幸せな夢を見ているのだとしたら……?

なんて、帰り道の電車でちょっと考えてしまったのですが、まあ、完全に蛇足ですね(笑) これだとテーマと合わない感じだし。蛇足ですみません。

 

最後に

この舞台は重たいのにその重さを感じさせず、かといって、軽くもない。「あの時代」の不穏な恐ろしい空気感と、家族の弱さと強さと、それでも巡っていく時代、やがて訪れる温かい時間を描いているのだなと思いました。とても素敵な舞台でした。

 

 

*1:ヴィジュアル系バンドのファン

*2:萬石にとっての。四姉妹の父。

*3:それぞれ●●には各季節を象徴する美しい景色が入るんだけど覚えきれなくてごめんなさい。こんな感じのセリフだったはず……。