THE STARRY RIFT

ヴィジュアル系バンドや女性・男性アイドルについて気ままに駄弁るブログです。

【私的おすすめヴィジュアル系バンド】Plastic Tree 13thアルバム「剥製」

ご挨拶が遅くなってしまいましたが、新年あけましておめでとうございます、フミヅキです。バンギャル*1だったはずが、いつの間にやら女性アイドルやらV6やら追いかけ始めて、楽しく散財している私。今年はひめキュン卒業組の3人が新しいグループで動き出すようなので楽しみにしています。

さて、このブログはそんな風にちゃらんぽらんに暮らしている私が、ヴィジュアル系バンドも!女性アイドルも!ジャニーズも!という感じで記事をあげるブログになるはずだったのが、いつの間にやらジャニーズカテゴリー(特に「V6」タグ)の記事が多くなってしまっています。*2もちろん、V6とジャニーズの世界はものすごく愛しているのですが、やっぱり私の本業というかアイデンティティバンギャルなので、もう少しヴィジュアル系の記事を増やしていこうと考え、今年の目標としては月2つくらい、好きなバンドや音源についての記事をあげようと思っています!(継続する根気があるか不安ではあるが……笑)

 

そんなわけで、今回は私がバンギャル化する原因となったバンド「Plastic Tree」を取り上げたいと思います。私が現時点でPlastic Treeの至高と思っている作品、13thアルバム「剥製」について書こうと思います。

 

アルバム「剥製」を聴いて感じたこと

私はこの作品を聴いて「プラの原点回帰にして最高峰!」と感じました。

聴いていて、Plastic TreeのCDを初めて手に取った日のことを思い出しました。綺麗な音楽なんだけど、気色の悪さと不気味さもあって面食らった記憶。

でも、最終的に私はその音楽に取り込まれてしまったんだよなあ。

このアルバムは初期の空気を感じさせつつ、Plastic Treeという世界を最も深堀りした最新の音楽だと感じました。

 

私が初めて聞いたプラの曲は金田一少年の事件簿(アニメ版)のEDで流れていた「Sink」でした。その後、地元のテレビ局で「ツメタイヒカリ」のプロモーションをしていたのを見かけたことがあり、それらから私がプラに抱いたイメージは「儚さ、暗さ、綺麗さ」だったわけです。

しかし、その後、近所にレンタルCD屋さんができた時に、せっかくだからと借りてみたプラのCD(Premium Bestだったかなあ?)は当時の私にはちょっとショックが大きかったのですよ。

当時の私(ひととおり聴いたけど……なんか……気持ち悪い、かも……)

今からすると「なんて視野の狭い感想だ!」と思うのですが、当時の私はまだバンギャルではなかったので*3、慣れない曲世界に面食らったのです。「May Day」は子供の見る残酷な白昼夢っていう感じだし、「リセット」も「サイコガーデン」も歌詞中に怖い表現があるし、「絶望の丘」のギターフレーズとかは聞き慣れない雰囲気だったのだろうと思います。*4

アルバム「剥製」を聞いて、この時に感じた「気持ちの悪さ」を思い出したのです。

気持ちの悪さといっても色々な種類のものがあると思うのですが、なんでしょうか、生き物の「生臭さ」と、人形のような「作り物めいた不気味さ」の同居? 生々しい感触もあるのに、夢の中にいるみたいに現実感がない感覚もあって、それを気持ち悪いと感じたのかもしれません。

Plastic Treeは音楽(歌詞・曲)もヴィジュアルイメージも、「生々しさ」と「作り物めいた現実感のなさ」という相反する性質を同時に持っている気がします。理科室にある生物のホルマリン漬けとか化石とか、球体関節人形とかを見た時の感覚に似ているのかな。ちょっと怖いんだけど、どこか惹かれてずっと見続けてしまう感覚。

だから今回のアルバムタイトルの「剥製」という言葉は、Plastic Treeというバンドを現すのに最適な言葉だと感じました。生物の外観を保持しながらも生きてはいなくて、でも、ただの「もの」ではなくて生々しい「生」の実感もあるという意味で。「虚」と「実」を孕んでいるというか、Plastic Treeというバンドはそういう矛盾を両立して表現するバンドなのだろうと、改めて感じました。

 

矛盾の両立と言えば、轟音と繊細さの同居もそうかもしれません。

ガラス細工のように触れたら壊れてしまいそうな儚く綺麗な音と、荒々しくざらついたアグレッシブな音とが、同じ場所に収まっている感じ。それが聴いていて堪らなくゾクゾクするのです。

 

このアルバムは過去作の記憶を思い起こさせつつ、でも、Plastic Treeというバンドがそこから発展し、進化し、さらに自分達の世界観を深化させた作品だと感じました。

 

「剥製」の内容

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↑(左)初回限定盤、(右)通常盤。とても素敵なイラスト&デザインは、劇団イヌカレー・泥犬さんによるもの! 特に初回限定盤の仕様は大好きです!

 

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↑初回盤の中身。上は全体用ケース。下は左から、ぬり絵・歌詞カード・CDケース。泥犬さんのぬり絵はもったいなくて塗っていない。保存用と塗る用にアルバム二つ買えばよかったかも……。歌詞カードは泥犬さんのデザイン画がふんだんに盛り込まれていて(メンバー写真とイラストのコラージュ作品多数)、歌詞もタイポグラフィーが施されていて素敵です。

 

 【曲名】

 

  1. ○生物
  2. フラスコ
  3. マイム ※
  4. ハシエンダ
  5. 告白
  6. インソムニアブルース
  7. float
  8. 落花 ※
  9. スラッシングパンプキン・デスマーチ
  10. スロウ ※
  11. 剥製
  12. 静物

 

※:シングル曲

 

1曲目「○生物」と最後の12曲目「●静物」は、鍵盤メインで同じフレーズを奏でるSEなのですが、対照的な作りになっています。「○生物」の方は無音からノイズっぽい音が増していくと、唐突に綺麗なピアノフレーズが始まり、その背後で生物的な嘶きや蠢きを感じさせるような音が鳴っています。それに対して「●静物」の方は、綺麗な鍵盤のフレーズがだんだんと緩慢になっていき、ノイズのような音が混ざって消えていく。まるで、何もない場所から「生」が発生し、最後には「生」が衰え、「もの」へと変わっていくような演出となっています。

 

そんな生と死のごとく対称性のある2曲に、アルバム曲が挟まれているのです。儚く繊細な世界観が広がりつつ、その中にはシュールな領域やブラックジョークな世界も含まれている。音と歌詞とで夢の世界を描きだしているようでありながら、どこか生々しく、現実世界のままならなさや沈んでいく感情を表現しているように感じます。

 

2曲目「フラスコ」はアキラさんの作詞作曲。抽象的な問答の歌詞とか、すごくアキラさんっぽく感じます。あと、調子が外れそうで外れない、不思議に綺麗なギターフレーズはなんとなく「絶望の丘」とかを思い出させて、最初から興奮度がアップしました。

3曲目「マイム」は竜太朗さん作詞、正さん作曲。このコンビはプラ的ゴールデンコンビといってもいいのでは。最近のプラの中では珍しく、ギラギラした雰囲気とキャッチーなキメみたいなものを含んでいる曲だと思いますが、同時に、曲全体に霞がかかったようなぼんやり・ふんわりした空気が纏わりついている感じ。これは海月*5には堪らない曲だと思います。

4曲目「ハシエンダ」は正さん作詞作曲。アグレッシブでパンクっぽい雰囲気なんだけど、「ナショナルキッド」とかとは一味違うムードがあります。大人っぽい色気と気怠さと言えばいいのでしょうか。大人の余裕みたいな空気感がとてもカッコいい曲です。

5曲目「告白」は作詞作曲ケンケンさん。ブッチさんの後任ドラマーとしてプラに加入したケンケンさんは、しゃべると末っ子感満載の可愛らしい雰囲気の人で、ドラムは打撃音が激しい感じ。なのに、作る曲はPlastic Tree感満載の繊細な曲が多いと思います。それってズルくないですか?(笑) この曲も繊細で素敵です。

6曲目「インソムニアブルース」は正さんの作詞作曲。白昼夢みたいな幻想的な歌詞は正さんっぽいなあと思いつつ、音のノリもそんな感じがします。ゆるく体を左右に揺らしながらリズムに乗る感じ。その心地よいリズム感と、暗い水彩画のような淡く滲んでいく雰囲気が同居している素敵な曲です。

7曲目「float」はケンケンさん作詞、正さん作曲。珍しいコンビですね。繰り返されるギターのクリアで綺麗なフレーズが、眩暈を誘うような、淡く幻想的な優しい曲。その曲調に雰囲気ぴったりな歌詞で、ケンケンさんいい仕事してますな!と言いたくなります。(誰目線の感想なんだ……笑)

8曲目「落花」は竜太朗さん作詞、正さん作曲。ロック感の強い、バンドサウンドを大切にした強めの曲だと思います。要所要所のフレーズやメロディ、曲の展開にプラっぽい!と興奮しつつ、切なさや消えていくような不安感にもプラっぽい!と興奮しました。あとドラムが派手でカッコいい。

9曲目「スラッシングパンプキン・デスマーチ」はアキラさんの作詞作曲。キュートな打ち込みの音とノリのいいバンドサウンドを使った、一見メルヘンチックな曲。だけど、結構残酷な世界観を描いているのが、皮肉がきいていて好きです。打ち込み音と合わせるように、竜太朗さんの声に機械音っぽいエフェクトが掛けてあり、こういうギミックに凝った感じはアキラさんっぽい感じかもです。

10曲目「スロウ」は竜太朗さん作詞、竜太郎さんと正さん共同での作曲。ゆったりとしたテンポの優しい音が使われていて、ぬくい水の中を漂っているような浮遊感溢れる曲。美しいサビのメロディであの歌い方をする竜太朗さんが素晴らしいと思うのです。情念を感じさせつつも、ふわ~っと漂うような歌声。あと、サビ以外の部分で独り言を呟くように歌う感じも好きです。

11曲目「剥製」は竜太朗さんの作詞作曲。必要最低限の音だけを使っている感じの曲だけど、音色にはめちゃくちゃこだわっているのが伝わってきて、「シンプル」という言葉は当てはまらない曲。とにかく「深い」曲だと感じます。心のうちへうちへと、深く深く潜っていくような感覚。暗闇の世界で、淡い月の光やマッチの火をぼんやりと眺めているようなイメージがしました。怖くはなくて、とても居心地がいい暗闇なのです。ずっとこの暗闇に揺蕩っているのもいいかもしれないと思わされてしまいました。この世界から抜け出したくないし、きっと私は抜け出せない。

 

深く深く作品の世界に引きずり込むようなアルバムだと思います。

 

記事前半で、私はこの作品を「最高峰」と表現しましたが、むしろ、「バンドの世界観を深く掘り下げて最も深い場所に潜り込んだような作品」と表現した方が適切かもしれません。 外部に向かって開けていくというよりは、うちに籠っていくような作品のような気がします。Plastic Treeというバンドの真髄を見せられた感じがありました。

 

実はこのアルバムがリリースされた頃のインタビューを読んで私は不安に思ったりもしていました。というのも、竜太朗さんが「バンドが最終形態に入った」的なことを述べておられたからです。

こんなすごい作品が出来ちゃったら、満足してバンドを辞めちゃうんじゃ!?

そんな風に不安に思ってしまうくらい、素晴らしいアルバムだと私は感じたのです。

 

でも、プラはその後も順調にシングルを出して、今年もアルバムがもうすぐ出るので、すごく幸せだなあと思っています。最近、RODK AND READ(075)の正さんのインタビューを読んだら、リリース予定のアルバムについて「相当いい作品ができそう」とのことで期待大!

(あと、同じインタビューで、プラをサグラダ・ファミリア(いつまでも完成しないもの)に例えて、「これからもコツコツと工事を続けていこうと思います(笑)」という発言も正さんっぽくて大好き!)

 

新しいアルバム、楽しみに待っています!

 

 

*1:ヴィジュアル系バンドのファン

*2:ジャニーズの記事って更新すると、こんな辺境ブログにも読みに来てくださる方が増えてモチベーションが上がるということもある。

*3:軽めのラノベ・声優オタクをしていた。

*4:でも、プラのことは忘れられなくて、その後にどハマりしていくわけですが。

*5:Plastic Treeのファン