The THIRTEEN 2nd EP「URGE -アージ-」感想
どうも。バンギャルだったはずがV6とか女子アイドルとかにもハマってしまって散財がやばいフミヅキです。
少し前にこんな記事を書きました。
この記事内で、トップ10にあげた作品の個別感想記事を別途書くと予告しておりまして、今回それに着手し始めたというわけです。順当であれば第1位のThe THIRTEEN 3rd EP「LAMENT -ラメント-」の感想記事から書くところなのですが、その前に2nd EP「URGE -アージ-」(上記リンク先では2位にしていました)について書いておいた方がThe THIRTEENの辿った音楽の変遷について書きやすいだろうなと思ったのでこちらを先に書いてみます。*1*2
The THIRTEENは現在活動休止中のSadieというバンドのボーカル・真緒さんとギター・美月さんの二人で結成されたバンド(ユニット?)です。正式メンバーはこの二人だけですが、サポートのベース・kazuさん*3とドラム・Ryöさん*4はほぼ固定なので、バンドという言い方でいいはず……。
元々Sadieのファンであった私にとって、この二人の新バンド結成のニュースは正直なところ、あまり嬉しいものではありませんでした*5。結成10年を迎えたSadieはいつか戻ってくることをファンに約束して活動を止めました。メンバーさん達のインタビュー等々を読む中で、「未来もSadieを続けるために、一旦Sadieというものを脱ぎ、各メンバーが様々な経験を積み外のものを吸収してきたいということなのかな」という風に私は理解しました。メンバーの皆様もいい大人だもん。そういう時期が来ることもあるよね、と。
逆に、Sadieの外に出た5人がそれぞれどんなことを始めるのか、「オラ、ワクワクすっぞ!」的な思いもありました。他の人と組むにしろ、ソロをするにしろ、新しい化学反応とか新しい世界とかを見せてくれるのでは?と。
それなのに、元の二人が組む(しかも二人だけで!)というニュース。
なんで真緒さんと美月さんが組むの!? 二人だけでSadieをする気なの!? なら、活動休止した意味ないじゃん!! 他のメンバーは除け者なの!? プンプン(怒)!!
いや、私、そんな可愛い感じじゃないけどさ……。
正直、私は当初、The THIRTEEN結成には不信感が強かったのです。
とか言いながらも気になって仕方がないので、The THIRTEENの1stアルバム「PANDEMIC」を買いました。*6
なんっじゃこりゃあああ! めっちゃカッコいいじゃねえかよおおおお!
単純でごめんね~(笑)
でも、二人の作った音楽はSadieの音楽とは少し違うものだったのです。Sadieは「哀しみ」を大きなテーマとしていて、ハードでヘヴィーな音で「哀」の世界を表現していました。でも、The THIRTEENはもっと明るい感じ。重低音もシャウトも相変わらず使っているけれど、サビで極端に明るく疾走感のあるロックになったり、歌詞が同じフレーズの連呼でキャッチーな雰囲気があったり、キラキラしていたり。Sadieらしさが皆無なわけではないのですが、なんて言えばいいのか、Sadieの哀しみの世界観バリバリの音楽に身を委ねてライブで暴れる感じとは違って、「フロアでポジティブにアグレッシブに暴れようぜ!」という印象の楽曲達でした。
雑誌インタビュー等を読んでいても、The THIRTEENではSadieの世界観ではやりづらかった曲も出せるとのことで、真緒さんと美月さんは二人で新しいことを始めようとしているんだなと感じ、単純ですが、私は二人を応援したいと思うようになりました。
そんな感じで、前置きが長かったわけですが。
本題の前に結成経緯を振り返ったのは、「URGE -アージ-」の前作、1st EP「EVIL MAD SCIENCE」においてThe THIRTEENがSadie的な音楽に回帰し始めたことがショックだったことを書きたかったからです。
なんでそこでSadieに戻んね~ん(涙)!!
下手くそな関西弁でツッコんだら関西出身の真緒さん・美月さんに怒られそうですが、ショックだったんですよ、私は!
特に「Montage」(同期の音の入れ方、堂々とした強いサビの歌メロが……)とか、「Whisper In Silence」(鍵盤の音の入った哀しいバラード……めっちゃSadieのアルバム終盤に収録されてそうな雰囲気の曲!!)とか、すっげーSadie感。なんか、歌詞も痛みを伴うような哀しみって感じが……Sadie感……。
なんでショックだったんでしょうね。求めていた音楽が、求めていた場所とは違うところから出てきたから? 自分でもすごく穿った見方だと自覚していますが、Sadieの再始動用にストックしていた曲を、披露するアテがなくなったからThe THIRTEENで出したんじゃないの?的な考えもふと頭をよぎりました。
雑誌等でお二人は「The THIRTEENでは自由に音楽をするつもりでいたのに『Sadie的な曲』を避けていた。EVIL MAD SCIENCEではそのリミットを外した」ということを語っていました。
いや、わかるよ、わかるんだけど、いきなりでびっくりしたんだよ……。それに「EVIL MAD SCIENCE」は好きな作品なんだよ。かっこいい曲ばっかり。なのに、なんでこんなに複雑な気持ちなのだろう……。
蛇足ですが、今の私のSadieに対するスタンスとしては、そりゃあSadieは大好きだけれども、5人とも無理せず己が道を進んでくれと。その時が来れば駆けつけるよと。忘れたりはしないから安心してと。そんな気持ちです。(【こっそり小声で】でもね、忘れてほしいなら(もう5人で会えないなら)、ちゃんと忘れてほしいと言ってほしい気持ち。たぶん真緒さん達は絶対言わないだろうけれども。言う意味もメリットもないしね)
なんか、気持ちの悪いファンでごめんね~(笑)
そんなわけで、私はモヤモヤした気持ちを抱えながら2nd EP「URGE -アージ-」を購入たわけです。
聞いた結果 ↓
めっちゃええやん……。
下手な関西弁第二弾すみません。そして、単純すぎてすみません。
でも、本当に良い作品なのですよ。やっぱり真緒さんの声はダークで哀しい世界観への嵌り具合が半端ねえです。 あの天鵞絨のような濃くて綺麗な声。
そもそも私はSadieの何が好きだったかといえば、楽器隊の強い音と真緒さんの濃密でドラマチックな声で表現される哀しみの世界観なわけです。
でも、「URGE -アージ-」にも圧倒的な世界観がそこにあるのですが、それがSadieとイコールなのかというと少し違うのかなぁと個人的には感じています。具体的に何が違うのかというのは印象の話なので言葉で説明するのが難しいですが……Sadieの方が普遍性がある感じなのかなあ? 「URGE -アージ-」はSadieよりも狭く深く世界を潜っていく感じがあるような気はします。(もちろんSadieもマニアックに深く潜るような曲はあるけれども)
そんなわけで、各曲の印象をまとめていこうと思います。(通常盤収録曲です)
1.urge to live urge to die
今までとは一味違うThe THIRTEENを見せるEPとして、挨拶代わりの1曲目であると思います。バンギャを煽って乗せやすい曲はいくらでも作れるけれども、そこから次のフェーズに移るぞという意思表明のような。
イントロは異国情緒漂う繊細な音で、どこか廃墟となった遺跡をイメージさせるような音です。そこからだんだんと強い音へと変化していきます。このドラマ性!
繊細で綺麗な部分と激しく荒れる部分が隣り合って折り重なっていくような展開も大好き。アコースティックギターの音が入るパートとドラムがドコドコ鳴るパートが隣り合っていたり、綺麗に歌メロを歌っていたかと思うとシャウトやグロウルの絶叫が聞こえてきたり。
サビのメロディーの切なく哀しい感じもいいですよね。真緒さんの「無理やりでもいい…」の歌い方、ヤバくないっすか!? ふおおおお!って心を持っていかれそうになりません!? やばみ。
2.アリア -Aria-
ダークなゴシック感・宗教感あふれる感じ。この曲の世界観大好き~!!
一部の歌詞が……これはドイツ語ですかね?(不勉強ですまない)
パイプオルガン的な音が入っていたり、神秘的なコーラスが入っていたりと、賛美歌チックな要素がありつつ、ヘヴィーでハードでダークな音がメインとなっています。聖性と相反しつつも隣り合う背徳的雰囲気がとても素敵です。ライブでも観客がステージに向かって手を捧げるようなパートと、頭を思い切り振るパートと交互にあって、なんというか献身と修行のイメージで宗教感が強いです。そういうの大好き。
あと特徴的なのは、サビの歌メロがかなり高音なところではないでしょうか。それをファルセットではなく地声で歌っていて、めちゃんこかっこいいです。(ライブでも無理くり出そうとする姿が死ぬほどカッコいいけど、同時に喉を大切にしてくれ!と祈ってしまう複雑なファン心理。ボーカルさんの喉は天から授けられた宝物だと思っているので)
最近のThe THIRTEENは音域の広さがすごいですよね。
3.THE DIM LIGHT OF DUSK
艶めかしさとハードさの融合が堪らない曲。
まず、イントロの何気ない風に掻き鳴らされる美月さんの不穏なギターがめちゃくちゃカッコいいです。そこからリズミカルでありつつもヘヴィーな楽器隊の演奏が始まって、なのにそこに厳かな雰囲気のコーラスが絡んでいくという。でも違和感のない不思議。
個人的にかなり好きな曲です。
音はかなり猛々しいというか、マッチョな雰囲気があります(シャウトとかも使っているし)。だけど、歌い方や歌詞が艶めかしいセクシャルな雰囲気で、そのマッチングが最高なのです。
歌詞に具体的な何かが書いてあるわけではないですが、匂わされる官能的な世界が反則的じゃないですか? それをエロい音(って何だ?ムーディーな音楽的な?)ではなく、ハードな楽曲に乗せてあるというのが、なんかすっごく……私、好きなのです。
(なんか自分の性癖を漏らしているようで恥ずかしくなってきたのでこの辺でやめておきます……)
4.Avenge the hatred
この曲はもう、わかりやすく疾走感あふれる、スピード感満載の暴れ曲という感じでしょうか。
でも、初期のThe THIRTEENっぽいかというと、そうでもないような感じがあります。歌のキーが高いからでしょうか。「URGE -アージ-」の他の曲の世界観から浮いているような感じもありません。
でも、この曲はそんなことをごちゃごちゃ考える必要はなくて、ただ曲のテンションに身を任せればいいのではないかなと思います。
5.Mellow
通常版後半はバラードが続きますが、The THIRTEENのバラード相当はヤバいです。
真緒さんは感情表現が過多なボーカルさんだと思いますが、その魅力がいかんなく発揮されている曲なのではないでしょうか。引くところは引きつつも、その分、訴えかける部分の圧力をすごく強く感じられます。のびやかだけれど、きっちりと強いサビのメロディーが素敵でうっとりしてしまいます。
そして、真緒さんの歌に負けない強い楽器隊の演奏が素晴らしいのです。まさに正々堂々と挑みかかってくるような楽器隊の音にも心を持っていかれます。この曲の美月さんのギターのフレーズはちょっとSadieの雰囲気を感じるかなあという気もします。かっこいいよ。
6.春紫苑
Mellowが「力強いバラード」というイメージなのに対し、私は春紫苑には「不穏なバラード」という印象があります。Mellowと同様に強い演奏のパートもあるのですが、どこか不穏な印象の楽器隊の音が心に残ります。歌のメロディーも歌詞も切なく美しいからこそ、その対比が印象深いのかもしれません。
私が好きなのは「心まだ触れていたい この想いほら」と歌った後のところ。楽器隊全員が同じリズムで力強く演奏し始めるのですが、その音が1フレーズごとに不気味に下降していく感じで、そこにすごく心を煽られるのです。
でも何よりも、この曲は高音の美しい歌声にうっとりと聞き入るのが一番心地よい曲だなあと思います。心が深い切なさに包まれて、それがとても心地よいのです。やっぱり真緒さんの歌声は最高ですよね。
【EP全曲のトレーラー映像】
というわけで、以上、The THIRTEENの2nd EP「URGE -アージ-」の感想でした。
でも、「URGE -アージ-」の感想記事のはずなのに、それ以外のことがかなりの割合を占めているような気も……。ま、まあ、評論的なものではなくあくまで「感想」なので……(汗)
「URGE -アージ-」は素敵な作品なので、ぜひ聴いてみてください!
そして、またまた蛇足ですが。
個人的には、初期のThe THIRTEENも大好きなので、初期曲を「これはThe THIRTEENの本質じゃない」みたいな変なカテゴライズ化はしてほしくないなあと思っています。今もライブで普通に演奏されているのでそういうことはないのだろうと思っていますが……。初期の曲も「二人で新しいこと始めようとしてるんだ!」「しかも、その『新しいこと』がめちゃくちゃカッコいい!」って、理屈じゃなく本能で理解できる楽曲だったから、とても大好きな曲達なのです。
振り返ってみると、バンドのファンをするというのは楽しかったり、たまに余計な心配をして苦しくなったり、不思議な行為ですね。でも、やめられないんだなあ。バンギャルだもの……。
さて、次の更新では3rd EP「LAMENT -ラメント-」の感想記事を書く見込みです。個人的に2018年のベスト作品! たぶん、次はもう少し作品本体に寄った文章になるはず(笑)
なるべく早くアップできるように頑張ります!
*1:というか、変遷について語るのだったら本当は1st EP「EVIL MAD SCIENCE」から話さないといけないと思うのだけども……。
*2:そして、私ごときが「The THIRTEENの辿った音楽の変遷」などという大それたことを書けるとは思えないけれど……。13ギャの皆様、お目こぼしください……。
*3:蜉蝣とかthe god and death starsとか色々
*4:ex-アヲイなど
*5:注意:人によって考え方・受け止め方がかなり違うと思います。
*6:いきなりアルバムリリースだったんです! お披露目のワンマンライブのために曲数を用意する必要があったとはいえ、すごいと思います。