初めてPlastic Treeを聞く人におすすめのアルバムってどれ?
もしそんな質問をされたらどう答えるだろうかと、何度か思案したことがあります*1。
新しいアルバムが出るたびに「前よりもいいじゃん!」という感想を持つので、「最新作が一番」という回答だと決めていたのですが*2。
けれでも現在の最新アルバムの「インク」、そして最新ミニアルバムの「echo」は、素晴らしくクオリティーの高い作品ではあるのですが、初めて聞く人には敷居が高いのではないかと思っています。
自分の中ではPlatstic Treeの楽曲をおおまかに3つに分けて認識しています。
① ポップな(わかりやすくキャッチーな)楽曲
② センチメンタルで繊細な楽曲
③ ロックバンド然とした暴れ曲
①~③の成分に、Plastic Treeらしい繊細さ・寂しさ・壊れた感じを滲ませた感じ。
自分の中で①に当てはまるものとしては、水色ガールフレンドやクリーム、エンゼルフィッシュを、②としてはツメタイヒカリや空中ブランコ、スピカを、③としてはGhostや割れた窓、hate red, dip itなどを考えています。
「インク」や「echo」は①のキャッチーな成分が少ないように思え、ゆえに少し難解というか、初めて聞く人にはとっつきにくいだろうなあという印象を受けました。ヴィジュアル系界隈でも流行り廃りの波は激しいのですが、その中でPlastic Treeは独自の音楽を追及しており、最新の作品もクオリティーが高くて物凄く雰囲気のいい作品となっています。「この雰囲気を出せるのは今のPlastic Treeだけだ」と聴き手に思わせる作品なのですが、だからこそ、初めての人には薦めづらいと思ってしまうのかもしれません。
じゃあ、結局、初めての人におすすめのアルバムは?
今は「アンモナイト」と答えるかな。
このアルバムは初期から比べるとだいぶ洗練された印象のアルバムなんですけど、キャッチ―さも併せ持っていると感じるので。だから、今のPlastic Treeを感じつつも、聴きやすいアルバムだと思うのです。
そんなわけですので、今回は初回限定盤の収録曲について書いてみたいと思います!
1.Thirteenth Friday
SEを兼ねた、ばりばりのシューゲイザーな曲。繊細すぎて、ヴィジュアル系バンドらしいハードな感じを想像していた人は面喰うかも。My Bloody Valentine(アイルランド出身、シューゲイザーの代表的なバンド)の影響が濃い曲です。上記分類で言えば②ですね。静謐な雰囲気がありつつ、優しく包み込まれるようでもある曲。
2.ムーンライト――――。
シングル曲です。1曲目の繊細な雰囲気を引き摺るように、独特な夜の空気感を纏った曲で、不思議な酩酊感を感じます。②でありつつも、①的なキャッチ―さも併せ持った曲。
3.退屈マシン
ロックチューンでありつつも、Plastic Treeらしい繊細さを滲ませた曲。分類の③でしょうか。でも暴れるってほど猛々しい曲ではないようにも思われる。
4.みらいいろ
この曲は遊戯王5D’sのエンディング用に書かれたこともあり、キャッチーさを大事にしたロックチューンですね。でも、その中にこのバンドらしい繊細さがチグハグさなく同居しているのがすごいところ。①+③。
5.雪月花
完璧に繊細な、竜太朗さんにしか歌えなそうな楽曲。ずっと繊細な音だけで続くわけではなく、楽器隊が荒めのアクセントを付けるところには付けていて、そのバランスが絶妙で聴いている人を飽きさせないと思います。分類すると②。
6.アイラヴュー・ソー
これはバリバリのロックチューン。楽器隊の手数多めでちょっとドライな雰囲気の演奏がかなりかっこいいです。歌も前曲からガラっと調子が変わり、ややラフな歌い方になっています。③への分類でいいでしょうか。
7.アリア
メロディーや歌詞は繊細で切ない印象なのですが、ギターを始め楽器隊が低音に寄り気味という不思議なバランス。けれどもそれで成り立つのがPlasitc Tree。分類は②。
8.デュエット
これは非常にカヤマアキラさん(この曲の作詞作曲者)らしい曲。プログレッシブロック全開のなんだかものすごい展開をする、面白い曲です。③に分類されると思うけど、別枠って感じもする。曲の終わり、1分以上にわたりインスト曲みたいになる部分の迫力ものすごいです*3。
9.バンビ
可愛らしい曲なのですが、ぶりっ子風の声にはならずに、さらっと歌えてしまうのが今の竜太朗さんのすごいところだと思っています。ポップな雰囲気はあるものの、実は竜太朗さんの亡くなられたご家族に宛てて書かれた切なさの漂う曲でもあります。分類的には①。
10.さびしんぼう
確か、雑誌のインタビューで竜太朗さんが病気で入院された経験を経てこの曲を作った言っていたはず。アコースティックギター一本での弾き語りで始まり、2分後くらいに楽器隊が合流する構成。触るのが憚られるような繊細な楽曲です。②に分類。
11.〜作品「ammonite」〜
SEです。水のたゆたう音と僅かに聞こえる演奏によるハーモニーが心地よいです。
12.ブルーバック
初回限定盤における最後の曲です。前のSEの雰囲気を引き継ぎ、静かな薄暗い海の中を漂っているような、ふわふわとした感覚が味わえる繊細な楽曲です。分類としては②だと思うのですが、この曲は後半から楽器隊の音が攻めに転じ、低音に寄ってリズムも細かくなります。結果、大波に攫われていくような雰囲気となり、大海に抱かれるような余韻を残してアルバムは終了します。
かなり自分の主観の入った文章になってしまいましたが、とてもいいアルバムなんですよ! もし興味を持って聴いてもらえたら嬉しいです。