アイドルやヴィジュアル系バンドというジャンルが否定されている文章を見かけると落ち込むけど……
たまにネット上で見かけることがあるじゃないですか。例えば「アイドルの曲がランキング上位に入っている意味がわからない」的な、アイドルというジャンルを否定するような意見を。ヴィジュアル系バンドもまた、否定的な意見が書かれることがあるでしょう。
アイドルやヴィジュアル系バンドを否定する発言がネットに書かれていたりすると、私としてはやっぱりムカッとします。特に詳しく知っているアイドルやバンドのことではなくても、なんとなく、好きな世界を否定されているような気がして、ムカッとした後は悲しくなって、そっとその画面を閉じます。
私はヴィジュアル系バンドのシーンが大好きなバンギャルで、女性アイドルにも好きなグループがいますし、最近はジャニーズのアイドルにもハマっています。(自分で書いていても、痛すぎることは重々理解しております……(笑))
それぞれのシーンで素敵なパフォーマンスを見せてくれるグループ・バンドがたくさんいてすごく楽しいし、グループ・バンドや所属する個人もユニークな個性があって、そこには素敵な空間が繰り広げられているのに、どうして理解されないのかなと悲しくなってしまいます。レベルの高い技能を持つ人達もいるのに。それに、技能のレベルが低いからといってそれは否定されるべきことではなくて、それとは違う何かをそのグループやバンドが持っていて、それが支持されているということなのです。それは楽曲のレベルが低いこととイコールではないはず。
そんなに楽曲や演奏のレベルを気にするのならば、超高度に洗練されて超高度な技能も要求されるクラシックや古典芸能を楽しめばいいのにとか、思っちゃいますね……。
バンドやアイドルにしか表現できない世界というものもあるのになあ。
ジャンルを楽しむための文法
漫画家のよしながふみさんの対談本だったと思うのですが、「少女漫画(特に萩尾望都先生世代のもの)を読むにはそのための文法の理解が必要」「自分はそういう文法を伝えられるように、今、漫画を描いている」というようなニュアンスで発言されていたのが記憶に残っています*1。
文法というと抽象的ですが、「読み方・楽しみ方」という意味合いだと私は理解しました。
そして、きっと、こういう概念はヴィジュアル系バンドやアイドルのパフォーマンス鑑賞も一緒で、これらのジャンルを楽しむためにはそのための文法(≒見方・楽しみ方)を理解している必要があるのだと思います。
ファンは自然とその文法を身に付けているのです。それも当然ですね。赤ちゃんが毎日日本語のシャワーを浴びて日本語の文法を理解するように、CD・雑誌の購入、ライブ・イベントへの参加等を浴びるようにこなすことで、ファンは自ずとそのジャンルの文法を理解するのです。たぶん。
でもきっと、これは他のジャンルでも一緒で、クラシックや古典芸能、ジャズや洋楽も、楽しむための文法を知らなければ十分に堪能することは難しいのではないでしょうか。
そして、その文法は必ずしも同じジャンルのファン同士で一致するとは限らないはず。おおまかにライブの楽しみ方や音楽の聴き方、相手への応援の仕方等に共通項目はあれど、少しずつ楽しみ方や鑑賞態度は違うはずです。その差異を「へー、これを聞いてor見てそういう風に感じるのか! それも面白いな!」と感じるのもまた、なかなか楽しいことなのではないでしょうか。
私個人の「文法」を分析すると、それはヴィジュアル系バンドやアイドルの作り出すデフォルメされた世界を堪能することなのだと思われます。
ヴィジュアル系バンドであれば、通常世界ではありえないメイクと衣装の素敵な人達が、美醜を極限にデフォルメした世界を音楽で表現してくれるのです。それをライブでは耳と目と体で体感し、周りのファンと一体になって音に乗る(ある種、現実から乖離された世界に行く)のが気持ちいいのです。
女性アイドルは、私にとっては、少女性の可愛らしさを極限までデフォルメした存在で、その発露である彼女らの歌や踊りを見ていると自然とニコニコしちゃいます。可愛い人形を愛でる気持ちに近いです。そして、人形ではない彼女らの変化や少女期間の有限性にもまた惹かれるのです。
男性アイドルについてはまだ模索中なところもあるのですが、おそらく、メンバー間の、ある種の理想化された信頼関係がすごく好きなのだと思います。なんだろう。昔、少年漫画を見ていて憧れた友情・共闘関係に近いものが目の前にあって、それを見るとすごくホッとしている自分がいる気がする。それプラス、根幹には個人的な音楽の好き・嫌いの嗜好も絡んでのめり込み具合が決まった気がします。
きっと、皆様には皆様の文法があるはず!
でも、そういう文法を覚えるとっかかりの第一歩は「このアイドル・バンドが好きかも!」という感覚や好奇心なわけで、そうすると、無関心層にアイドルやヴィジュアル系バンドの文法を理解しろというのはなかなか難しいことなのでしょう。そうすると、クラシックや古典芸能、ジャズ、あるいは宝塚のように歴史を積み上げて、「そういう世界もありうる」という認識が持たれるのを待つしかないのかもしれません。
他人の好きなものを尊重するという意味
私にはできるだけ気を付けていることがあって、それはパッと見は理解できないジャンルのものがあったとしても、すぐにそれを否定する言葉は出したくないということです。どういうところが支持されているのかな?とまずは分析してみたい。
これは、自分が好きなジャンルをそのジャンルをよく知らない人から否定されたら悲しいから他人にもしたくないというのもありますが、それプラス、自分の老化や劣化を認めるようで癪なのです。
私が育った家は恵まれた家庭で、成績さえキープしていればどれだけラノベやら漫画やらを読んでいてもOKでしたが*2、大人によっては「漫画ばかり読んで……アニメばかり見て……」などと言う人も多い時代だったので、「どうしてこんなに楽しいものが大人にはわからないんだろう」とムカムカしていました。そういうつまらない大人にはなりたくないなあと思っていたものです。逆に言えば、若い子が好きなものを理解できなくなったときは、自分が肉体だけでなく精神や感覚も老けたということなのだろうと思えて、ちょっと怖いのですよ(笑)
だから、そういう個人的な老化への恐怖(笑)も込みで、私は他者の好きなものを尊重したいなと思っています。
実は朝からちょっと嫌な文章をネット上で読んでしまったせいで*3、勢いでこんな記事を書いてしまいました。いや~、ネットは知りたいことを調べられるし、私と同じようなファンの人達の意見を見られて楽しいけど、見たくないものも見えてしまう時があるから難しいですね。
ネットは広大だわ(笑)