THE STARRY RIFT

ヴィジュアル系バンドや女性・男性アイドルについて気ままに駄弁るブログです。

Plastic Tree 14thアルバム「doorAdore」感想

どうも。女子アイドルとかV6とか、色々なグループのファンをしつつも本業はバンギャルなフミヅキです。

さて、2018年の個人的音源ベスト10に上げた作品、その感想を個別に書いていこうと宣言したのにもう6月下旬……私のルーズさ加減、申し訳ないです。

 

fumizuki-f.hatenablog.com

 

今回やっと第3位、Plastic Treeの14枚目のオリジナルアルバム「doorAdore」の感想を書きたいと思います。

 

 

不思議なバンドですよね、Plastic Treeって。

もうずっと長いこと活動していて、ヴィジュアル系を代表するバンドではあるものの、決してメインストリームではないというか。プラっぽいサウンドのフォロワーがいなかったわけではないんですけど、例えばDIR EN GREYとかみたいにその系統の音楽がわかりやすく界隈を席巻するわけでもなく……という感じ。

なんでしょう、マニアックな世界観や音楽性ゆえ? あと、竜太朗さんの声ありきなところはあるかもしれませんね。

それもあってか、「こういう音楽はPlastic Treeでしか聞けない!」という唯一無二の価値がプラにはあるなといつも感じます。

でも、Plastic Treeのこと好きなバンドマンもヴィジュアル系内外問わず多いんだろうなという感じはありますよ。*1

 

このアルバムを聴いて、やっぱりPlastic Treeって金太郎飴みたいだな、プラの音楽はいつ聞いてもプラだなと感じました。捻じくれている感じ、寂しさ、繊細な心を優しく包んでくれるような心地よさとか。Plastic Treeにしか作れない世界だなと思います。

だからといって、全然飽きないです。ずっと音楽がアップグレードされていると感じるからでしょうか。さらなる洗練とか深く掘り下げる感じとか。

でも、初期のPlastic Treeが色褪せるわけでもないのです。初期の楽曲は、世界の捩じれをダイレクトに体現した音の世界な感じがあって、いまだに大好きです。

 

竜太朗さんも不思議な方ですよね。なんかふわふわしている雰囲気で柔らかそうなんですけど、確固たる芯が絶対にぶれないというか、バンド活動全般について妥協を許さない頑固そうな印象があります(笑) この方の内包する世界観や表現センス、創作センスこそがPlastic Treeという景色を鮮やかに描き出すのだろうなとも思っています。捻れて、繊細で、幻想的で、壊れていて、優しい……エトセトラエトセトラ。魅力的な言葉や音が溢れてくる不思議な方です。

でも、プラを成り立たせるためにはスーパーリーダー長谷川正氏がいなければなりません。初期プラのサウンドを一手に引き受けていたスーリーは、おそらく竜太朗さんに与えた影響も大きいのだと思います。*2今の正さん曲の、昔よりさらに洗練されつつも「やっぱりこれが正さんのサウンドだよね~」な感じにも心がトキメキます。そして、あの大海のような優しさ穏やかさですべてをニコニコと受け止める感じが尊すぎないですか。

そして一番新しくバンドに入った佐藤ケンケン氏。実は私、ケンケンさんに変わった直後のライブの「空中ブランコ」を聞いて「なんか雰囲気違う~(涙)」ってなった面倒くせーファンなんですが(ケンケンさんのドラムが鋭すぎて怖い音に感じたのです)、今のフィット感を見ると、ケンケンさんやメンバー皆さんの試行錯誤や時間の積み重ねを勝手に感じて感動してしまいます。あとケンケンさんは竜太朗さん以上にふわふわ?というか危なっかしい天然弟キャラなところも可愛らしいですよね。それなのに作る曲があの緻密な繊細さっていうギャップ!

最後にギタリストのナカヤマアキラさんなのですが、バンド内では独特の立ち位置な気がします。ヴィジュアル系バンドってギタリストがメインコンポーザーとなって始まる場合が多いと思うのですが、アキラさんは最初は作曲していなかったんですよね。今は何曲も書いていますが、どちらかというと実験的な曲とか、プラの幅を広げる曲が多いイメージ。とはいえ、インタビューを読むかぎり、今はプラのサウンド全般をディレクションする立場なのかなという風にも読み取れます。なんというか、サウンド作りの職人なイメージでしょうか。

いずれにしろ、プラの王道曲でも実験的な曲でも、アキラさんのギターの音はすげーですよ。竜太朗さんの声に沿うように、でも負けずにその曲の世界観を体現している感じがします。若手のヴィジュアル系バンドのギタリストの皆さん、ナカヤマアキラ氏をもっとリスペクトしてみてもいいんじゃない!?と思うことが多々あります。みんな、尊敬するギタリストにアキラさんの名前を挙げようぜ!!

すごく個人的な印象なんですけど、私はアキラさんに堂本光一くん的なイメージがあるんです。光一くんって普段のしゃべりは結構ガサツなおっさん臭い印象があって(光一くんファンの皆様申し訳ありません……!)、ファンを邪険に扱う発言(もちろんファンとの信頼関係があっての発言ですよ 笑)もするんですけど、舞台とかステージ上とかでは完璧な二枚目になるじゃないですか。普段は自分の美貌についてどうでもいいと思っていそうな感じなんですけど、自分の美貌レベルが超絶ハイスペックであることはちゃんと理解していて活用する術を熟知しているプロフェッショナル感。あと、座長として自分の舞台を作り出すプロデューサー的側面とか、なんていうのか、私は光一くんに「いぶし銀な職人気質」を感じていて、アキラさんにも同じような印象を抱いているんですよね。割とアキラさんもガサツなおっさん感はあるんですけど(すみません……)、あのギターの圧倒的な表現力はすごくないですか。(私はギターは全然詳しくないですけど、アキラさんのギターすげーなーっていつも感じます!)ライブで気分に応じてオリジナルフレーズ繰り出すみたいなこともされていませんか、あの方???(アキラさんとギターに詳しい人、教えて下さい)

 

そんな感じで、前哨戦を長く書いてしまいましたが、doorAdoreの曲単位の感想を書いてみます。

 

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doorAdore 完全生産限定盤A・B

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付属のライブDVD&フォトブック

 

遠国

やっぱりPlastic Treeのアルバム1曲目はこうであるべきだよね!そんな風に心が震える曲です。(SE的な曲が来るパターンもよくあるけど)

「ネガとポジ」でいう「眠れる森」、「ウツセミ」でいう「うつせみ」(ウツセミはSE的な曲が1曲目だけど)

ふわ~っと滲み出すように始まって、竜太朗さんも繊細な歌声で、淡い水彩画みたいな音楽なんですけど、ゆったりとしつつも骨太感もあるリズムが(というか、正さんのベースの音が)異常に心地よいです。瞬間的に激しくなるギターソロも聞きどころ!

これは正さんの作る曲だね~!こういう感じがいいんだよね~!と1曲目からバシバシ机を叩きながら聞いていました(笑) 優しい音楽なんだけど、幻想的というかサイケデリックな幻が見えてきそう。

 

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恋は灰色

スピード感のあるロック。全編ギター押し!という感じがして、すごくカッコいい曲です。爽快感のあるギターというよりも、ちょっと神経質っぽい印象(音の雰囲気やら妙な緻密さやら)を受けます。それもプラっぽくて好き。

あと、発売前に曲名が発表された時に「恋はみずいろ」みたいな感じなのかなと勝手に予想していたので、そこはかなり裏切られた感があります(笑)(もちろんいい意味で!)

ギターソロもめっちゃカッコいいのですが、瞬間的にベースソロとかベース押しなところがパッと出てくるところも心憎くないですか。正さん曲ですものね!

 

エクジスタンシアリス

1つ前の曲も一筋縄でいかない感じはありましたが、この曲は一筋縄どころか二筋、三筋……という感じです。まずイントロからして、この変なギターのフレーズ何なんですか?っていう。アキラさんの曲かな?って思ったらやはりアキラさん作曲でした。

ギターもところどころ不協和音な感じ、歌のメロディーもところどころ不協和音な感じ、でも、サビは竜太朗さんの声の特性を最大限に生かした切なく寂しく美しい感じになるのです。ナニコレ、ずるいやつじゃん???

 

雨中遊泳

雨をテーマにした曲ってプラ・オブ・プラだと思っています。(実は雨の曲がそれほどたくさんあるわけではない気もするけど)

シングル曲なのでド王道ということもあるのかもしれません。ゆったりしたバラード寄りのミドルチューンでしょうか。

(最近、激しめのバンドやらアイドルやら色々聞いていて、そのバンド・グループによって「これミドルチューン扱いするの?アッパーチューンじゃないの?」みたいな定義の曖昧さを感じている……)

音が視覚を纏っている感じがします。窓の外の暗い景色や降り続く雨の音、水たまり、窓を滑り落ちていく水滴とか、聴いていて心の中に情景が浮かび上がってくる感じがあります。音が心を洗い流してくれるような心地よさも感じました。

 

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サイレントノイズ

シングル曲が連続~!

タイアップが付いた曲(たしかゲーム側からのオファーがあっての書下ろし)なこともあって、このアルバムの中では一番キャッチーな雰囲気のある楽曲ではないかと思います。(ドラムがダダン!って鳴るところ*3とか、ヴィジュアル系のキャッチーさを取り入れいているのかなって勝手に思っている)

ギターも綺麗ですよね。ポップな感じの部分と、切なく綺麗な部分と両方入っていて、プラっぽい音だなと感じます。こういうストレートに綺麗なギターを弾くのもアキラさんなんだよなあ。

 

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サーチ アンド デストロイ

私にとって「サーチ アンド デストロイ」といえば、「見敵必殺(サーチ アンド デストロイ)!見敵必殺(サーチ アンド デストロイ)だ!」*4と従僕である吸血鬼に命令を下すヘルシングインテグラル嬢であるため、曲名が発表された時にはどんなハードロックが来るのかしらと勝手に想像しておりました。

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HELLSING平野耕太先生)3巻より サーチ アンド デストロイ参考画像

しかしながら、実際に楽曲を聞いてみてビックリ。かなり繊細なバラードというか、バラードよりもさらに繊細な曲でした。ケンケンさんが作曲ですね。ケンケンさんって天然気味の弟キャラな感じなのに、こういう繊細過ぎる世界観の曲を作るんですよね~。

寂寥感漂う楽曲で、聴いていると寂しいけど、寒い中で毛布に包まれるような温かみも感じる音楽だなと思います。

 

残映

続いて再びケンケンさん曲。やはり繊細な楽曲なんですけど、「サーチ アンド デストロイ」よりもミドルチューンな感じ。なんとなく懐かしい感じもあります。

サビの歌メロが、ストレートに綺麗な部分と、高音への上がり方がなんとなく気持ち悪い部分(すごく説明しづらいんですけど、なんか変というか調子はずれ気味なメロディーだと感じる)が繰り返されて、奇妙な捻じれ感が癖になります。楽曲自体は割と淡々とストレートな曲という感じなんですけど、なんだか気になってしまう曲です。

 

いろつき

イントロのギターのフレーズになんとなく沖縄っぽい感じを受けました。そして、2本のギターがコール&レスポンスするみたいに音を奏で合うのが可愛らしいです。(確かライブでもアキラさんのギター+竜太朗さんのギターで弾き合っていた記憶)

だからちょっとポップな印象の楽曲なのですが、歌い方とか歌のメロディーとかは淡く滲むような感じなのがPlastic Treeのバランス感だよなあと感じます。

この曲を聞いた時、アキラさんの曲かなと思って歌詞カードを見たら、作曲者に竜太朗さんがクレジットされていてちょっとびっくりしました。でも、歌のメロディーの雰囲気は竜太朗さんっぽいかもですね。

 

念力

こちらもシングル曲です。あまり歌のタイトルとして無さそうな「念力」ですが、この楽曲にはぴったりのイメージ。踊れるロック曲という感じなんですけど、妙な捻じれとか浮遊感があるように感じます。サイケデリックな夢の中にいるような感じというか。

すっげーカッコいい楽曲なんです。このアルバムはじんわりと響く音を楽しむ曲が多い印象なんですけど、その中でこの曲はライブでやるの楽しそう~!っていうジャンルの曲ですね。カッコよくリズムを刻むロックであり、やっぱりプラの人達の演奏はめっちゃカッコいいな~!と思います。

ストレートにカッコいいロックなんだけど、Plastic Tree独自の捩じれスパイスがしっかりふりかかっているゆえ、Plastic Treeらしさがぶれない曲で大好きです。

 

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scenario

こちらはラウドな雰囲気に振ったロックですね。

荒々しいテンションはバシバシ伝わってくるんですけど、なんかこう緻密なカッチリした雰囲気もあるんですよ。作曲者は……?と思ったら、やはりアキラさんです。

この曲はごちゃごちゃ何かを言うよりも、その荒々しさに身を委ねたらいいだろうと思います。

 

ノクターン

11曲目でアルバムの終わりが見えてきたところ、サヨナラを予感させるような寂しさ溢れる曲が来ました。

繊細な曲……? でも、結構カオスな感じに楽器隊が演奏し合っている部分もあって、ドラマチックな楽曲でもあります。

なんだか作品の終わりが見えてきて、寂しい気持ちが同期していく感じがあります。

 

静かの海

最後の曲は優しくて寂しい歌。

竜太朗さんの歌声って、もしかしたら人によって好き嫌いあるんじゃないかなと思うんですよ。ロックのボーカリスト一般像とは違って、囁くような歌い方も多用されますし。でも、だからこそ竜太朗さんにしか出せない雰囲気があるんですよね。

この曲も竜太朗さんが歌うからこそ出てくる、寂しさ・儚さ・温かみがあるのかなと感じます。竜太朗さんの「弱」側の歌声の出し方(というか引き方?)が堪らないですよ。高音部分の心地よさも堪らないっす。

そうなんですけど、サビで一気にグッと声を出してくる感じ。激しく寂しい感じが引き立って、こちらもまた堪らないですね。

そしてその声に寄り添う楽器隊の音が優しくて、これまた堪らないんですよ。

 

 

そんな感じで、色々書いてみましたが。

こういう風に音楽の感想を書いた時にいつも思うのですが、なかなかうまく音楽から受けた感覚を言語化できなくて悔しいです。私は音楽用語もよく知らないし……。

素敵な音楽なんですよ。本来はそれだけなのかもしれないですけど。でも、それだけじゃなくて、音を聞いて心の中に感じた視覚的なイメージが浮かんだり、ちょっとした音にふわわ~!と萌えみたいな感情が湧いたり、そういう感想を伝えられたらなあと思うんですけど、難しいですね。

 

Plastic Treeは私がバンギャルになるキッカケの、初恋相手みたいなバンドだから、ずっと素敵な音楽を生み出し続けていることがすごく嬉しいし、誇らしいです。ずっと憧れです。

私は学生時代、ライトノベルやら声優さんやらのオタクだったんですけど、昔、某名探偵の孫のアニメのエンディングになったプラの曲*5を聞いて、「おやおや?これはすごく良い曲なのでは?」と感じた私。(本格的に聞き始めるのはその数年後だけど)

やはりあの時の私の直感は正しかった!

ガキのくせにいいセンスしてんじゃねえかよって褒めてあげたい(笑)

 

やっぱりPlastic Treeの曲はいつ聞いても素敵ですね。

 

 

 

 

*1:真緒さん(The THIRTEEN、Sadie)が竜太朗さんの親戚の方(?)のイベントに呼ばれた時にはプラの曲を歌っていたし、この前、アコースティックなライブイベントで元amber grisの手鞠さんがDaizyStripperのまゆさんと一緒に蒼い鳥をカバーしてた。昔、葵さん(彩冷える)だったかな? イベントでプラと一緒になった時のMCで「竜太朗さんとお話しした!」ってバンギャルに向かってドヤってたのも見たし、ムックの逹瑯さんも対談とかで竜太朗さんが好きって言っていたはず。トリビュートアルバムの参加者もすごく面白いラインナップでしたよね。

*2:インタビューとかを読む限り、竜太朗さんの聞く音楽の志向も正さんからの影響が大きいんじゃなかろうか

*3:この書き方で伝わるだろうか……

*4:「敵を発見次第、殲滅せよ」の意味

*5:微妙にタイトルをぼやかして自分の歳を誤魔化そうとしている(笑)